株式会社 水本機械製作所 ステンレスチェーン・金具・ジョイント・メーカー

Quality

成分・品質・材質について

チェーンの製造・加工について

Chain manufacturing and processing

材料の形状・引抜加工

水本機械製作所で製造に使用しているのは、ほとんどが線材と鋼線(コイル)です。他には棒鋼(バー)を使用します。
弊社では、自動でコイルを伸ばしつつ、曲げ・切断を行うことが出来る製鎖機械を用いてチェーンを製造しています。棒鋼ではなく線材を使用しているのは、自動化しやすいためです。またコストが安く、材料を無駄なく使えるということも線材を使うことの利点です。
弊社が使用している線材は、材料メーカーが一から製造しています。ステンレススクラップなどの原料を溶解し、精錬を行いながら成分を調整します。そして出来上がった鋼片を加熱して圧延機にかけていき、熱間で線材の形に加工しています。

そのようにして製造されている線材ですが、JIS規格に記載されている線径(線の太さ)の最小はφ5.5mmです。つまり、材料のメーカーで製造可能な線材はφ5.5mm以上のサイズのみとなります。(厳密にはφ5mm以上です)
ではそれより小さいサイズの材料はどのように作られるのでしょうか?

答えは引き抜き加工です。

引き抜き加工メーカーは材料メーカーが製造した材料を用いて更に細い径となるように加工していきます。
下に示した図のように、材料を引き抜いていくのですが、常温もしくは材料の再結晶温度未満で引き抜いていきます。冷間加工で引き抜かれた材料は鋼線と呼ばれ、これにもJIS規格が存在します。鋼線は線材に比べ寸法精度が高く、光沢もあります。

また、引き抜き加工が加わっていることで鋼線は線材よりも高価となります。さらに、線径が細くなれば細くなるほど加工回数が多くなるので、高価になります。

ステンレスの熱処理

ステンレスに熱処理はつきものです。まずは熱処理の種類を以下に示します。

熱処理の種類 説明 簡単なイメージ
焼きなまし 加工硬化による内部のひずみを取り除くことで、組織を軟化させて展延性を向上させる処理。 軟らかくして加工しやすくする。
焼入れ オーステナイト組織の状態に加熱した後、水中又は油中で急冷し、マルテンサイト組織にする処理。 硬くする。
焼き戻し マルテンサイト組織の状態から鋼を再加熱し、一定時間保持した後に冷却する処理。 硬くしたものを、少し軟らかくして、脆さを抑える。
固溶化熱処理 適温に加熱・保持し、材料の合金成分を固体の中に溶かし込み(固溶させる)、析出物を出さないように急冷する処理。 溶接等によって耐食性が低下した部分を元通りにする。

ステンレスの種類つまり、マルテンサイト、フェライト、オーステナイトによって実施する熱処理は異なります。熱処理の方法や温度についても、JIS規格により鋼種ごとに定められています。弊社が主に扱っているオーステナイト系ステンレスは「固溶化熱処理のみ」となります。(下記表参考)

- 鋼種の記号 焼なまし 焼き入れ 焼き戻し 固溶化熱処理
マルテンサイト SUS403 800~900℃徐冷
又は約750℃急冷
950~1000℃
油冷
700~750℃
急冷
マルテンサイト SUS410 800~900℃徐冷
又は約750℃急冷
950~1000℃
油冷
700~750℃
急冷
マルテンサイト SUS420J2 800~900℃徐冷
又は約750℃急冷
920~980℃
油冷
600~750℃
急冷
フェライト SUS430 780~850℃空冷
又は徐冷
オーステナイト SUS304 1030℃~1180℃急冷
オーステナイト SUS304J3 1030℃~1180℃急冷
オーステナイト SUS316 1030℃~1180℃急冷
オーステナイト SUS316L 1030℃~1180℃急冷
オーステナイト SUS310S 1030℃~1180℃急冷

水本機械製作所で扱う製品はほとんどがオーステナイト系ステンレスなので、「固溶化熱処理」について少し詳しく説明します。
オーステナイト系ステンレスの特徴のところでも述べましたが、冷間加工によって発生するひずみによってSUS304は加工硬化します。また溶接を行うと、溶けた部分やその周辺の熱影響部は組織変化を起こします。これらの組織変化を起こした部分は、不均一なので耐食性が低下している場合があります。これを固溶化熱処理によって均一なオーステナイトに戻し、耐食性を元通りにするということです。ただし同時に、冷間加工によって得られた硬さも失われることになります。
固溶化熱処理には、大きく分けると大気中と真空や不活性ガス雰囲気中で行う処理があり、弊社では大気を東熱、真空を成和電子に依頼しています。

大気熱処理

大気熱処理は、加熱した炉の中に材料を入れ昇温後取り出して水槽で冷却するので、炉自体は昇温したまま連続使用出来るので処理費用が安価ですが、表面に酸化物層が出来るので、基本的には処理後酸洗や研磨などの後工程が必要となります。(用途上不要な時もある)ただし、社内の研磨では酸化物を除去し切れないので、研磨が必要なものはマルイ鍍金に依頼しています。

真空熱処理

真空雰囲気処理は、都度室温の炉内に試料を入れ密閉後に真空・ガス置換を行い、誘導やプラズマ加熱で昇温後に窒素などの不活性ガスを流して冷却するので、炉の大きさや冷却能力によって処理量が制限される上に、多量の不活性ガスを使用し毎回炉内が室温になるので処理費用が高くなります。しかし高温処理でも酸化しないので、基本的には酸洗や研磨などの後処理が不要になります。(仕様の関係で必要な時もある)

弊社では用途や製品仕様などを考慮し大気と真空に振り分けて依頼発注しています。

error: Content is protected !!